張り込みは、探偵の仕事の中でもっとも地味で、もっとも根気を試されます。
車の中でじっと同じ場所を見つめ続ける時間は、ときに何時間にも及びます。
冷たい夜もあれば、蒸し暑い真夏の日もあり、時計の針の進みが遅く感じられることも少なくありません。
しかし、依頼者様の顔を思い浮かべると、不思議と気持ちは折れません。
「真実を知りたい」「確かめたい」──その思いを託されているのだと考えると、視線の先を見つめる眼差しに力が入ります。
先日、通りを行き交う人々を何気なく目で追っていると、見慣れた後ろ姿が視界に入ってきました。
その一瞬で、数時間の待機に意味があったと納得するのです。
張り込みは忍耐の連続だが、結果が訪れるのはほんの一瞬で、その一瞬を逃さず、確実に捉えることこそ、探偵の仕事の核心だと思います。